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ハーレムを革命する力を!――赤月みゅうとの反=ハーレム論

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↑なぜこの画像を使っているかは文章全体から察してください



赤月みゅうとはエロ漫画出版社・ティーアイネットの主力作家の一人であり、2010年に出版された『イノセント』以来、同社で2016年までに七冊の単行本を出版している。
特に、エロ漫画としては珍しい上下巻構成の作品(エロ漫画単行本のほとんどは短編集として出版され、連作であっても一冊で完結することがほとんどである)として『美少女クラブ』を実現させていることからも、彼の実力と人気をうかがい知ることができるだろう。

彼はしばしば、同出版社の立花オミナと並び、ハーレムものの作家として語られる。確かに赤月の作品のほとんどは、多人数の女性によって一人の男性が性的に奉仕されるという構造を持つという点で一貫している。
しかしもう少し注意深く見てみると、まったく逆のベクトルでの一貫性も見えてくる。赤月みゅうとの作品は常に反=ハーレム的な作品でもあるのだ。本稿では彼の特異な作家性を、それが最も明快に現れている中編「祭子」(『少女×少女×少女』所収)を中心に、個々の作品に現れる具体的な描写を確認しつつ明らかにしたい。


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・壊すべきものとしてのハーレム



赤月の作品で単行本化されているハーレムものの作品のうち、『少女×少女×少女』から『美少女クラブ』に至る中期の作品群――列挙すれば、「祭子」「エンティエンヌ・ドゥ・シルエット」(以上『少女×少女×少女』(2011)所収)、『奴隷兎とアンソニー』(2012)、『美少女クラブ』(2013)――はすべて、まったく同じ終わり方をしているといってよい。
すなわち、1)ハーレムが崩壊する、2)ハッピーエンドである。

たとえば「祭子」は、自分のために作られたハーレムを終わらせるために、主人公の賢吾が自殺を試みる(が、無事助かる)ことで終わる。あるいは『美少女クラブ』もまた、主人公ハインツが「ガーデン」と呼ばれる未来の生殖用ハーレム施設を囲む壁を、文字通り破壊することによって終わる。どちらの作品でも結局、ハーレムの破壊によって、主人公は愛するヒロインと新しい未来を生きていくことができるようになる。


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↑『美少女クラブ』より。ハーレムが文字通り崩壊し、主人公とヒロインは新たな一歩を踏み出す


逆に言えばこれらの作品群では、ハーレムは崩壊すべき悪しきものとして提示されている、ということになる。赤月が反=ハーレム作家と呼ばれるべきなのはそれゆえだ。
ではなぜ、ハーレムは破壊されなければならないのか?

実は、赤月みゅうとの描くハーレムのあり方は、ほとんどどの作品でも共通する三つの特徴を持っている。そしてその特徴から、彼の作品においてハーレムがなぜ悪なのかを理解することができる。以下、「赤月流ハーレムの法則」を明らかにしよう。



・赤月流ハーレムの法則その1――ゾンビ化する美少女



一つ目の特徴は、とにかくセックスの相手になる女性が大量に登場するということだ。
ハーレムものである以上女の子がたくさん出てくるのは当然だろう、と思う向きもあろうが、赤月作品では、単にジャンルの定義だけでは説明しきれないほどの人数の女性が現れる。
「祭子」では終盤のページで確認できるだけで十七人、『美少女クラブ』では二十人以上の女性がハーレムに所属している。『奴隷兎とアンソニー』でも二桁以上の人数がセックスの相手方になる女性として登場する。短編の「エンティエンヌ・ドゥ・シルエット」ですら九人のヒロインが現れる。



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↑『美少女クラブ』第一話の扉絵より。この人数を見よ。正直、何度読んでもキャラクターの名前と顔が一致しない……




このように女性を大量に登場することによって、お話や絵が提示できる情報量の限界に対しキャラクターの数が完全に飽和してしまう。結果として、ストーリーに中心的にかかわる主要キャラクター数人を除き、ヒロインたちを設定やキャラクターデザインによって弁別し個別化することが難しくなっていく。いわばみな同じ顔・同じキャラに見えてくる。私は赤月の作品において、肉感的な美女が特に背景の説明なく次々現れ主人公と交わるとき、生者に群がる大量の個性なきゾンビたちを想像してしまう。悦楽が恐怖に転嫁するほどに、物量が過剰なのだ。



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↑「祭子」より。主人公に群がる美少女たちが、生者の肉に群がるゾンビのように見えてこないだろうか?



・赤月流ハーレムの法則その2――管理と支配



二つ目の特徴は、ハーレムがしばしば管理や支配によって成り立っているということである。
女性が自律的にハーレムを作り男性に奉仕しているというよりは、有形無形の力によって女性たちがハーレムを形成するように仕向けられ、維持させられている、という構造の作品ばかりなのだ。
支配の方法はひとつではない。「祭子」では、家父長的な父が娘たちを精神的に支配することでハーレムを作り出している。『美少女クラブ』や『奴隷兎とアンソニー』では、魔術的なアイテムや、暗示による洗脳支配といったよりファンタジックな道具立てによって、女性キャラは男性に奉仕させられる。だがどちらにせよ、女の子がハーレムに縛られているという点は同じだ。



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↑「祭子」より。父に怯える娘達。



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↑『奴隷兎とアンソニー』より。魔法のHアイテムで女の子を好き勝手にしてしまえ!



・赤月流ハーレムの法則その3――ズレた中心



そして三つ目の特徴として、ハーレムを作り・管理する存在が、ハーレムで奉仕の対象となり、読者の身体的感情移入対象ともなる男性キャラクターと別になっている。管理の中心と奉仕の中心がズレているわけだ。
「祭子」では主人公の父親、「エンティエンヌ・ドゥ・シルエット」ではシズクちゃんというバイセクシャルの女性、『奴隷兎とアンソニー』ではシャーロットという謎の女の子、『美少女クラブ』ではガーデン・ローズというメイドが、自分以外の男性に奉仕するためのハーレムを作り維持している。



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↑「祭子」より。父による娘達の監禁に抗議する主人公。


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↑「エンティエンヌ・ドゥ・シルエット」より。男性教師を神輿に担ぎあげてハーレムの構築を図るシズクちゃん(右下)。真の狙いはどさくさに紛れ気になるあの娘とエッチすること。



・人間性を奪うシステムとしてのハーレム



以上三点が赤月みゅうとの描くハーレムに共通する特徴である。これらの特徴は一体となり、ハーレムの悪、ハーレムによる人間の非人間化というモチーフを浮かび上がらせる。

ハーレムは管理と支配によって人間を制御するシステムである。システムの中に組み込まれた女性は自由意思を抑圧され、男性に奉仕するための存在となる。そこでは女性は交換可能な性具に過ぎず、一人の人間としての尊厳や個性は奪われてしまう。美少女の大量投入によるゾンビ化は、このことの表現として理解できる。
「祭子」のクライマックスで自由になった大量の少女たちを一コマに収めるとき、表情を一つ一つ丁寧に書き分けて見せる赤月みゅうとの手腕は見事というほかない。が、彼の真の巧妙さは、乱交シーンでは表情を比較的画一的に――ゾンビとして――描くことで、対比によってハーレムによる個性の簒奪を印象付けていることだ。



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↑「祭子」より。解放後の表情と、乱交シーンでの表情を比較して欲しい(クリックで拡大)。



さらにハーレムのシステムにおいて自由意思を奪われるのは女性だけではない。ハーレムを管理する中心と奉仕の中心である男性がズレている以上、男性もまた支配され、主体性を奪われた、女性とセックスするための機構に過ぎないのだ。
『美少女クラブ』のハインツは、ハーレム施設「ガーデン」の管理者ガーデン・ローズによって外界の情報を隠匿されている。「ガーデン」を囲む壁は、女たちだけでなく彼をも含めて閉じ込めるためのものだ。
「祭子」ではヒロインたちのみならず、賢吾もまた父に恐怖によって支配されている。ハーレムを崩壊させようとして自殺する際、彼は「これで"皆"自由だ」というセリフを発する。引用符は、自由になるのが少女たちだけではなく、自分も含めた"皆"であることを表現している。



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↑「祭子」より。主人公もまた父親に抑圧されている存在である



女性のみならず男性も含め、人間の自由意思、尊厳、個性を奪い、交換可能な性の歯車にしてしまうシステム――それが赤月みゅうとの描き続けるハーレムの正体だ。ゆえにこそハーレムは打開されなければならない悪なのだ。
深読みするならば、有象無象の女性キャラを性欲のはけ口としてのみ扱い、想像上で犯し続けるエロ漫画読者――彼自身もまた性欲に支配された本能の歯車でもある――を象徴していると見ることもできるかもしれない。



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↑『奴隷兎とアンソニー』より。ほとんど読者への説教である



・罪の自覚



赤月みゅうと作品においてはハーレムは悪であり、最後に崩壊することになる。ハーレムの崩壊の仕方においても赤月作品は共通する一つのパターンを示している。主人公の罪の自覚とともにハーレムが終焉する、という展開だ。
「祭子」では、ハーレムを作り出した父が、実は賢吾の妹たちに対する支配欲が作り出したもう一人の自分だったことが明らかとなる。そのことを知った主人公は、飛び降り自殺を試みることでハーレムを破壊しようとする。『奴隷兎とアンソニー』では、自分がかつてとある少女のことを無碍に扱っていたことを主人公・ヒロトが思い出す。記憶の彼方にあった罪を思い出し反省することで、ハーレムの終わりが告げられる。『美少女クラブ』のラストでは、ガーデン・ローズの「私は…たくさんの罪を犯しました…」というセリフを、主人公が「それなら…僕も同じだ…」と受け、ハーレムを囲む壁を破壊する最終コードを起動する。



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↑『奴隷兎とアンソニー』より。かつての罪を思い出した主人公は、魔法アイテムを使ったハーレム生活を止めることを決意する



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↑『美少女クラブ』より。そのものズバリ罪についての会話シーン。この後二人は「オール・エンド」を発動し、ガーデンを破壊する。



要するに赤月の作品では、ハーレムは、主人公がかつて犯した罪の象徴である(ハーレムが破壊されるべきもう一つの理由がここにある)※。ゆえに主人公が罪を自覚し反省することで、罪=ハーレムが消滅し、主人公と少女は人間性を取り戻す。


このドラマ上のクライマックスを見事に視覚化してみせるのが赤月みゅうと作品の最大の美点だと言ってよい。赤月のハーレム作品ではしばしば、ハーレムは空間的に局限されたものとして描かれる。「祭子」では父の住む屋敷に少女たちが監禁されている。『美少女クラブ』ではハーレム施設「ガーデン」は壁に囲まれている。「エンティエンヌ・ドゥ・シルエット」では乱交は決まって学校の美術室の中で行われる。
ハーレムが崩壊するクライマックスにおいて、主人公ないしヒロインたちは外へと出てゆく。特に決定的なシーンが、小さいコマを続けるタメを経て、大ゴマの中に描かれる。つまり、ハーレムによる支配/人間的な自由というドラマ上の対立が、内/外という物語内の空間的な対立、小さいコマによる圧縮/大ゴマによる解放という物語外の空間的対立に重ねられ、視覚化されているのだ。



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↑「祭子」のクライマックス。みんな一緒に外へ!先に引用した「”オール・エンド”!!」の大ゴマも同様の効果を持つコマだ。



・まとめと最近の作品



以上、赤月みゅうとのハーレム作品の、反=ハーレム的というべき一貫性を指摘してきた。
美少女のゾンビ化、管理と支配、ズレた中心、三つの特徴を持つ、人間を非人間化するシステムとしてのハーレム。そのハーレムが主人公の罪の自覚によって破壊される。赤月の中期作品はほぼすべて、『少女×少女×少女』において確立されたこのパターンをなぞることによって作られているといってよい。それぞれ別の作品を読んでいるというより、一つの作品のリメイクを読み続けているように思えるほどだ。複数の女性に奉仕される性的満足感を存分に表現しつつ、その中に執拗にハーレムへの倫理的批判を同居させ続ける、特異な自己否定的テーマを持つ作家であるといえよう。

では、中期に入らないハーレム作品――初期の「ご主人様とメイドール」(『イノセント』所収)、後期の『なつみつハーレム』、『リンガフランカ』など――はどうなのか、と問われるかもしれない。
これらの作品においては、ここまで述べてきた「赤月流ハーレムの法則」が部分的に現れながらも、部分的に裏切られており、個別の検討が必要である(特に『なつみつハーレム』は、一見能天気にハーレムの幸福感を謳いあげる作品でありながら所々病的なデティールが表れており、魅力的ないびつさを抱えている作品だ)。『リンガフランカ』については別の記事でレビューしているのでそちらを参照してほしい。他の作品については、稿を改めて検討したいと思う。


=====
『少女×少女×少女』については、ツイキャスエロマンガ夜話の第八回で詳しく語ったので、そちらも合わせて聞いていただけるとありがたい。

※ハーレムが主人公の罪の象徴であると同時に、ハーレムを管理する中心がしばしば主人公からズラされるというのは、一見矛盾して見える。だがこれはつまり、赤月の描く主人公が、自覚していない自分の罪に振り回される存在であるということに過ぎない。主人公の記憶や意識の中からは、彼の罪は失われている。そしてその隠れた罪によって、彼の自由意志は奪われる。赤月の作品において主人公の罪は、主人公自身の一部であると同時に、以上の二つの意味で主人公の心に対して外部にある。<外部化された自らの罪>というテーマを物語に表せば、主人公以外の中心が、主人公の罪を象徴するハーレムを運営するという赤月ハーレムの構造ができあがる。
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